「そ、それは奢れ、と言うことですか…?」


「?」


当たり前でしょ?

とでも言うかのように首を傾げた姫はかわいくて、


がっくり肩を落とした奥寺は、自分の財布を取り出した。


「この魔性の女め…」


幸いにして、奥寺のこのつぶやきは周囲の雑踏に消えていった。





あとで絶対兵司さんからクレープ代返してもらおう。





姫は3600円のクレープを抱え、嬉しそうに、奥寺は軽くなった財布に悲しそうに、お店の前を後にした。


急激に寒くなった懐具合に、奥寺は人知れず涙する。


お嬢様がお小遣い欲しいって言えば、兵司さん、いくらでもくれるだろうに。