「奥寺さん、もてますね」
映画館から出た姫は不機嫌丸出しでそう呟いた。
「そうですか」
仕方がないから奥寺はこう答える。
どちらかといえば、姫に下心ありの視線を送っている男の方が多い気がするのだが…
これで奥寺が隣にいなかったら、姫は何回ナンパされるだろう。
考えたら気が遠くなりそうだ。
そんな感じでなんとなく嫉妬のようなものが出てきたところで、奥寺は姫を見る。
なんだかんだいいながらも楽しそうだ。
奥寺の左手を引っ張って道の向かいにあるクレープショップを目指している。
甘酸っぱいベリーの香りの中、姫は年相応に満面の笑みで振り向いた。
それを見て奥寺もふっと笑う。
「奥寺さん、あの1番でっかいやつ食べたいです!」
奥寺の笑みが凍りついた。

