「お嬢様、そろそろ行きましょうか」
奥寺がそう言って姫をエスコートする。
いつものタキシードではなく、茶髪に合わせたラフな格好だ。
リネンのシャツにダメージジーンズ。
いかにも今時の若者執事の姿に、街まで送ってくれる年配執事は苦笑い。
でも、
「かっこいいですね」
姫は本心から一言。
「光栄です。」
そう答えたきり、奥寺は車窓から流れる景色を眺めていて姫の方を向かない。
「?」
急に黙り込んだ執事に、姫は自分の失言があったかと焦り、それに気づいた奥寺は慌てて弁解する。
運転手の執事はバックミラーのなかで赤面している奥寺を見て、「わかいなぁ」
とつぶやいた。

