自室に戻った姫は、奥寺と勉強をしていた。

もとい、勉強を教えていた。


大きく開けた窓から吹き込む夜風が涼しい。

それとは関係なしに、姫は鳥肌が立っていた。

「ど、どうしてさっき教えたのと同じパターンなのに解けないんですかぁ」

「いや、だってこれ、同じ問題じゃないじゃん」


開き直ってペンを回す奥寺は、執事バージョンではなくチャラ男仕様だ。


「どうして、どうして方程式はできるのに図形の問題が壊滅的にダメなんですか?」

「わからないものはわからないんだから仕方ない。」


なぜそうまで言い切れるのか、姫にはそれがわからない。





そのうち自分のテキストに飽きてきた奥寺は、姫が読んでいる本に興味をだした。


「ねえ、それ今度映画化するって話題のファンタジー小説だよね。好きなの?」

「はい、かなり」

「よし、じゃあ今週末見に行こう。」

「はい?」


勉強以外の事には決断が早い奥寺であった。