「それではお嬢様」
と一夜明けた4月の第二日曜日。
奥寺が巻き尺やらを抱えた女の人を伴って姫の部屋へとやってきた。
「新しい学校の制服を採寸させていただきます。」
するとその女性は
「いやー、姫ちゃんも随分と大きくなったわね」
「?」
頭にはてなマークを浮かべる姫をよそに、いきなり姫のバストを測り始めた。
「えーっと」
そのままサイズを読み上げようとした女性の口を抑え、姫は奥寺をガン見する。
なによ、変態。聞く気?
目そう言っている。
奥寺はいたずらっぽく笑うと、「失礼します」と部屋を出て行った。
その様子を見ていた女性は、「姫ちゃん、そんな恥ずかしがるようなことじゃないわ。あなた充分大きいもの」
姫はそれを黙殺する。
「あの、あなた私がよく行ってた…」
「そうよ、あの執事さんに呼ばれて来たの。出張でーす」
「奥寺さんがですか?」
「ええ、最近は出掛けてないだろうから、気分転換にって。いくつか洋服も持ってきてるわ」
大切にされてるわね、と店員さん。
そう見たいですね、と姫。
そしてふと気付く。
「さっき、私のバストサイズ測ってましたよね?」
「ええ」
「でもお店にサイズ記録あるはずだからいらないんじゃ…」
「そこはあれよ。姫ちゃんの顔が見たかったのと、執事さんを照れさせたかったのよ」
きっと、扉の外で聞き耳立ててるわよ、と店員さん。
察しのとおり、部屋の外で聞き耳を立てていた奥寺は、一人で赤面していた。
「くそっ、あと少しで聞けたのに…」
奥寺は案外普通の男の子だった。

