「まぁ、姫ちゃん。随分と大きくなったのね」
兵司真希という女性は、一見大層わかく見える。
その実、仕事疲で白髪の目立つ姫の父と同年代なのだから、女の人ってすごいなと姫は思う。
「姫ちゃん、今失礼なことを考えていたでしょう?」
ぶんぶんと首を振って、否定の意を示す姫は必死である。
きっと、正直に言ったらここで暮らせなくなる…。
これを女の勘ともいう。
「まあ、いいわ」
案外あっさりスルーした兵司さんは、
「さて、」
と手元の呼び鈴をチリンと鳴らした。
軽めの音が広い部屋にこだまする。
それが自然にきえた頃、先ほど姫がはいってきた扉の前に一人の執事が立っていた。

