兵司さんの家は東北の市街地の郊外にある。
自宅から3時間ほど車に揺られてきただけなのに、なんだか疲れた気がする。
久しぶりの遠出だったからだろうか。
心なしか顔色が悪いように見える姫に、ついてきたメイドの加宮も心配の色を隠せない。
「お嬢様…、兵司様にご挨拶をしたらすぐに休ませていただきましょう」
「でも、お父様への連絡とか…」
「私がお引き受けします」
「荷ほどきとか…」
「それも私が」
どこまでいっても人のいい姫だった。
運転手が下ろした荷物を持とうとしてフラフラなっている。
中身は姫のぬいぐるみだ。

