あれから半年が経った。
相変わらず姫は屋敷から出ることができない。
部屋にこもって本を読んでいることが多くなった。
これじゃ、ニートじゃん。
姫は自嘲気味である。
庭の桜に新緑が目立ち始めた頃、父が姫の部屋にやってきた。
いつになく真剣な顔をしている。
「姫、屋敷を離れて少し田舎に行ってみないか?」
話を聞いた知人にそう持ちかけられたらしい。
居候先は兵司さんという女性の別宅だ。
兵司さんは小さい頃よく遊びに来ていた父の大学の先輩で、華の四十路、独身だ。
姫も面識がある。
そうか、いつまでもここにいたらみんなに心配かけちゃうよね。
そうひとりで考えた姫は、パパの目を見てゆっくりと頷いた。

