久しぶりに庭に出て蕾が膨らみ始めた桜の木を見上げていた姫はちょうど一人だった。


気分転換にと、外塀の近くまで行ってみたとき、物陰に隠れていた男が姫を押し倒したのだ。


そのまま無防備な口内に男の舌が侵入してくる。



男女の体格差もさる事ながら、ほとんど運動をしない姫には抵抗することもできない。



一方的な行為に意識が飛びかけたそのとき、男の手が姫の薄いワンピースの裾から侵入してくる。

「いやっ……」


背筋が粟立った。


身を硬くした姫をもてあそぶように、男の触手が衣服の胸元にかけられたとき、急に男の重みが自分の上から消えた。


視界の隅で影が動いた。

………?

見覚えがある?



今度こそ一瞬で姫の意識が飛んだ。








気がつくと姫は自室のベッドに横になっていた。


自分の匂いがとても落ち着く。


そんな姫が目を覚ますのをベッドサイドで見守っていたのは、ママと長兄と、知らない男の人だった。


先ほどの男が脳裏をよぎって再び姫に震えが走る。


「大丈夫、大丈夫よ」


そう言って姫を抱きしめるママもまた泣いていて、それを見た姫は安心して、久しぶりに声を上げて泣いた。