「ふぁーあ…眠っ」

雨女のわたしには
慣れっこの雨の日
体ももちろん心もどんよりする

そんなこと思いながら
コンビニで売ってるような安っぽい
透明なビニール傘をさして学校へ向かう

時刻はもう
みんながせかせか登校してる時間より
2時間ほど遅め
そんなの普通に思う
寧ろまず家を出ることが
すごいかのように…………

わたしは中学2年
母子家庭に生まれ
まともに小学校にも行った覚えがない
不登校ムスメ
冬月真妃(とうづき まき)
同世代の人間と絡むことが苦手
別にクラスで浮いてるわけでも
嫌われてるわけでもないが
クラスより職員室や保健室を好む

「傘ってさしてても
足とか濡れるし意味ないぢゃん…」
なんて独り言ポツンと呟くと
もう門に足を踏み入れていた

その足が向かうのは
もちろんクラスではなく
保健室……………

「おっはよーせんせっ‼︎」
トォッと少し湿った制服で
保健の女教員(村田)に飛びつく

「またクラスぢゃなくここなの⁇」
と、いつもの不機嫌さで
ブツクサ言ってくる

「もっちろーん‼︎学校=遊び場的な⁇」
「はぁ…たまにはクラスを
覗いてみればいいのに……」

あえて聞こえなかったかのように
教科書なんて入ってない
すっからかんのカバンを
ソファーに放り投げ

脱力感と共にソファーに倒れこむ

すると、
「おぅっ冬月‼︎今日は来てくれたかー」
ニヤニヤしながら担任(山本)がきた
40ちょい過ぎのおっさん教師

「おはよ…ふぁ…」
「冬月?今日も眠たそうだな?」
「んぢゃ、眠いから帰ってい⁇」
「今来たばっかなのに
もう帰る話するなよーーー
今日は編入してきた新しい先生が
挨拶するんだから
体育館のぞきにこい‼︎
もう全校生徒集まって
校長の話聞いてるんだから」
「新しい先生⁇イケメンいる⁇」
「バっバカか…まあもうすぐ
紹介されると思うから来いよっ」
「考えとくー…」

新しい先生かぁ…
まあおっさんおばちゃんばっかだろう
どうせほぼ不登校のわたしには
関係ないことだし…………

うーん、暇だし覗きにはいってみるか‼︎

重たい体育館の扉を開け
山本の早く入れって言う口パクに
あっかんべーとかしながら
自分のクラスが整列してる後ろに
ちょこんと立った


ちょうど新しい先生が
前に出て紹介されてるとこだった

するとクラスメイトが
わたしが来たことに気付くと共に
新しい先生の中から
あるメガネをかけた
男性教員をパッと向き
わたしに視線を戻す

それが怪しくてわたしは
背伸びするように前の方を
覗くと自分の
好きなタイプな男性教員が立っていた

「うわぁっ///」
その時小さい声では
あるが思わず声が漏れてしまった

すっかり、雨も止んで
曇り空だけが広がってた
帰りがけ全校生徒が帰る中
久々に登校してきたわたしを見つけ
クラスメイトの1人
登校した時にはよく一緒に帰ったり
遊んだりしてる
田平蓮花(たひら れんげ)
がちょこちょこ駆け寄ってきた

「まっきぃー‼︎やっと来てくれたんだ‼︎
てか、あの男性教員タイプっしょ⁇」

さ、さすが蓮花…
久々の出会いの挨拶はかるく
速攻そっちの話ぶち込んできたな…

「蓮花…………感動の再会より
やっぱりそっちの話ぃ⁇」
「まぁ、真妃の感想は
想像つくしべっつにいいんだけどね」
「どゆこと⁉︎
てか、やっぱり感動の再会はスルー⁇
………ですよ…ね」
「で、やっぱりタイプ⁇
てか校門のとこで挨拶してるよ‼︎
行かなくていいの⁇」
「まあ、思わず声が
漏れちゃったぐらいだし
タイプではあるよ………けど…」
「けど⁇けど何よ⁇」
「せ、先生だし叶わない恋だよ‼︎」

そうだよ…一目惚れしちゃったけど
もっと先生の事知りたいって
思っちゃったけど………先生だもん…

「そうかもだけどぉ
うーん、難しくなるの
面倒だからっとりあえずっ
さようならの挨拶がてら
絡みに行っこううううぉ‼︎」
「えーいいよー」

と、裏門から帰ろうとするわたしを
ぐいっ引っ張って
先生の元へ連れて行かれた

「あっ、集会の途中で
入ってきた子やん‼︎」
げ…そんな
第一印象つけてしまってたのね

軽げな関西弁で
その先生は話しかけてきた

関西の方から来たらしく
まだ教師になってまだまだらしぃ
25ぐらいだったかな
黒縁メガネの黒髪短髪
軽くワックスで整えたような
グレーのストライプ模様が薄く入った
スーツを着ていた

間庭和樹(まにわ かずき)
わたしは間庭先生にその瞬間も
どんどん吸い込まれるように
恋に落ちていた……………………


続く