だんご虫ヒーロー。【番外編集】





これは…そう言おうとして夕里を見ると、夕里は優しい笑みを浮かべていた。




「せっかくの結婚式だから、忘れないように指輪を新調してみた。どう気に入った?」




私が今までつけていた指輪は、高校の卒業式に夕里からもらったもの。
20年くらいつけてたから、さすがに古くなっていた。




それに…




「…夕里からもらって、気に入らないわけないでしょ?」




気に入らないなんて言うわけがないのに、それを知ってて聞いてくるんだから。




私の言葉に満足したのか夕里は笑顔を見せると、ポケットから小さな箱を取り出した。
そして左手の手袋を取って、私の膝に乗せた。




「…李も俺につけて?」




指輪の交換だからさ。




そう言って首を傾げ見上げてくる夕里は、いつもよりも綺麗で眩しかった。




私は小さな箱を開けて、私と同じ指輪を取った。
夕里の左手を片手で握ると、ゆっくりと薬指にはめた。




指輪がはまると、夕里は手をかざして指輪を見つめている。




そんな一つ一つの仕草でさえ、愛おしくて夕里に見入ってしまう。




私の視線に気付いた夕里がふっと笑い、私の両手を握ると顔を近づけてきた。




自然と目を閉じると唇に触れる、柔らかな感触。




ゆっくりと目を開けると、すぐ目の前には夕里の顔があった。




「…誓いのキス、先にしちゃったね」




なんて夕里が言うからおかしくて、笑ってしまった。




それから少しでも緊張もほぐそうと夕里といろんな思い出話をしていたら、雪菜ちゃんが入ってきた。




そして私達は手を取り合って、式場に向かった。