先にヘアメイクをやり、李色のウエディングドレスへの着替えも終わった。
「…わぁ、李ちゃんほんと綺麗だよ!」
「ふふ、ありがとう」
鏡越しに目を輝かせながら言う雪菜ちゃんが可愛くて、つい笑ってしまう。
すると部屋のドアからノック音が聞こえた。
それを聞いた雪菜ちゃんはニヤニヤと笑いながら、部屋のドアに向かった。
「…じゃ、李ちゃん。また開始5分前くらいに呼びに来るから、ごゆっくり」
「え?雪菜ちゃん?」
急にどこに行くのかと後ろを振り返る。
雪菜ちゃんはドア付近でノックした本人と話をして、出て行った。
雪菜ちゃんとすれ違って入ってきたのは…
「…夕里」
そこには黒のタキシードに身を包んだ、私の旦那が微笑んで立っていた。
夕里はゆっくりと私の方に近付いてきた。
「うん、よく似合ってるよ。李色のドレス」
「ほんと、夕里のサプライズにはいつもやられっぱなしよ?」
全く、というように眉をハの字にしてため息をつく。
夕里は子供のように無邪気な笑顔を見せた。
いい年したおじさんがこんなサプライズして。
なんて思ったけど、嬉しかったのは事実だから何も言えない。
夕里は私の丸出しの肩から腕をなぞるように指を滑らせた。
いきなりのことに驚いて、体がビクッと反応してしまう。
「…じゃあ、サプライズのついでにもう一つ」
「なに?またリボンの婚約届?」
高校の時のことを掘り返すと、夕里は恥ずかしかったのか頬を赤くして視線を外した。
夕里は椅子に座る私の左隣に片膝をついた。
そして私の手をとると、薬指についた結婚指輪を外した。
驚いたけど、夕里の自然な動きに何も言えず、ただ見守ることしかできない。
「…式は短時間にして、披露宴に時間を費やしたいからここで交換」
そう言って夕里が私の薬指にはめたのは、丸みを帯びた白銀の綺麗な指輪だった。



