これは消し去りたい出来事と同時に、一生忘れられない出来事。




大学院を卒業して、臨床心理士として働き始めてしばらく経ってのこと。




今日は仕事が休みで、いつもより遅くまで寝ていた。




そういえば今日は夕里も仕事休みって言ってたな…




「……ん………」




重い瞼をこすりながら、ゆっくり目を開ける。




目の前にいた人物にすぐに目が覚める。




「…ゆ、夕里!?」




目を大きく見開く。




夕里はニッコリと笑って「おはよ」と言った。




なんだか機嫌がいいな、朝から。




というか私のベッドにいつの間に入ってきたの?




それを聞きたかったけど、それよりも聞いて欲しいことがあるみたいで。




夕里の笑顔がそれを訴えてる。




「……なんでそんなにご機嫌なの?」




渋々聞くと、待ってましたというように夕里は食いついてきた。