自然と目に涙が溜まる。




すると紙袋から別の箱が出てきて、箱から何かを取り出した。




「…綾女、妊娠してから今までヒールの靴履いてないだろ?
家事にバイトに忙しく走ってたからな。




だからガラスの靴じゃないけど、これを履いて息抜きをして欲しい」




箱から取り出したのは、真っ白なパンプス。




確かに。
妊娠してからは、可愛いスニーカーかぺたんこ靴がほとんどだった。




ヒールの靴なんて、捨てた気がする。




航さんはシンデレラの王子様みたいに片膝をついて、私にパンプスを履かせてくれた。




チラッとパンプスの入ってた箱を見ると、すごく高いと有名なブランドの名前が書いてあった。




もしかして……




「…これを買うために……残業を…?」




航さんは私の足を撫でて、苦笑いをした。




なんで……どうしてそこまで……




それで航さんが具合悪くなったら、どうするの。




「…女性がどういう物が好きなのかよく分からなくて、同僚や先輩の女性社員に聞いたりしてたんだ。
そしたらここのブランドなら100%喜ばれるっていうから。




同僚の仕事を横取りしてまで稼いだから、飲み会セッティングしろって言われた」




航さんは頭を掻いて困ったように笑っている。