「昔・・・お前が虐待受けてるとこ、たまたま俺が見て・・・。
それで俺、怖くなったんだ・・・・・・。
お前がとても辛そうで・・・。見てられなかった・・・・・・
そんで、目を伏せて走ったら・・・
体力ねぇのに、お前俺を追いかけてきて・・・・・・
俺はわざと信号のあるところを渡って逃げ込んだんだ。
そしたらお前はもう追いかけてこない。そう思って。
けど、お前は・・・・・・それでも俺を追いかけてきた。
信号は赤だった。当然車は走ってる。数えきれないほどに。
その中にお前は飛び込んだ。」

咲は黙ったままである。

「その瞬間、当然ながらクラクションが鳴った。
お前はその音にビビったのか、身動きすら取らなかった。
車も、避けることや、減速することすらままならなかった。
もうそんな余裕ある距離なんてなかったんだ。
それで・・・」

「助けてくれたんだよな?あたしを」

俺はその言葉を聞いて、はっとした。

慌てて咲を見る。

そこには、さっきまでの咲はいなかった。

代わりに、俺が・・・俺だけが知っている、一番好きな咲がいた。