全然知らなかった。

覚えててもおかしくない、いや、忘れてるほうがおかしいくらいなのに・・・・・・

あの時・・・。咲の事を忘れてた時と同じ感覚を、俺は再び感じた。

「母さんはその時いなかったの?」

「そうね。あなたが遊びに行ってるときだったから。」

「・・・・・・」

まさか・・・

「あんまり母さんも事情知らないままなんだけど、車に轢かれて、搬送先の病院であなたが目を醒ましたら・・・
事故の事、覚えてなくて・・・・・・。」

「なあ母さん、」

俺は話してるにも関わらず、母さんに質問した。

「その・・・俺が目覚める前・・・・・・。咲・・・来た?」

この心の奥底に眠っていた記憶・・・・・・。

あと少しで届きそうなのに・・・

「ええ。母さんもその時にあの子の顔見たの。」

「・・・!!!」