「・・・私・・・。この世で独りなの。」

「・・・・・・?」

急に話しだし、しかもよくわからない言葉から始まったものだから俺はどう反応していいかわからなかった。

しかし、そんな俺には気にも留めないような様子で彼女は話し続ける。

「家族との記憶もない。今までの記憶もない。友達の記憶も、あなたたちの記憶まで・・・・・・。わかってる。昨日あなたが泣いたのは、私があなたの事覚えてなかったからでしょ?」

分かってるならなんか気を遣った言葉かけてくれよ・・・。

そう思いつつ俺は無言で頷いた。

「・・・・・・あの時、私はあなたになんていえばいいかわからなかった。“何で泣いてるの?”って訊いたのはいいけど、あなたも返事なかったし・・・。挙句の果てに“んじゃあな”って、何も言わないまま帰っちゃうし・・・。本当はちゃんと声かけるべきだったんだろうけど。」

俺の心の内が分かるのか、“あいつ”はそう俺に言った。