しかし、今の咲はどうだ?

記憶をなくしてしまい、たとえ過去に俺とあいつらみたいな関係を築いている人がいたとしても、それすら思い出せない。

“咲”を失ったときの、先ほどの俺のように、きっと“あいつ”はなっているだろう。

あくまで俺のカンだ。

証拠なんてない。

けれど、あの時の“あいつ”は確かに悲しく虚ろな目をしていた。

もしも俺のカンが当たっていたとしたら、“あいつ”はひどく辛い思いをしているだろう。

だって、そんな思いすらいえる相手がいないのだから・・・・・・。

俺が“あいつ”にできる事。

それはいたって少ない。というか、ないかもしれない。

けど、俺が“あいつ”の心の声の吐き場になれたら?

友達じゃなくても、あいつの悩みを聞ける存在になれたら?

“あいつ”は、記憶はなくとも少しでもかつての咲に戻れるかもしれない。

まだ“あいつ”を認められたわけじゃないけど、もう一度話がしたい。

だから俺は“あいつ”に会いに行く。