その時のお父さんの声が今でも耳にこびりついている



震える肩を抱きしめながらあたしはお父さんの声を聴いていた



「莉子、お前の母親は俺とお前を捨てたんだ」



捨てた・・・・?




捨てたってなに?お母さんにあたし、捨てられたの?




その時のあたしは何が何だかわからず呆然とするしかなくて・・・・



出て行ったんだと分かったのはお母さんの着替えや荷物が全部なくなっていると知ってから




ぽっかりと穴があいたようになった家の中とあたしの心



その時のままで心は止まってしまっているのかもしれない



あたしは蓮の手を握りしめると俯いたまま蓮に問いかけた




「お母さん・・・・い・・・今どうしてるの?」




「大丈夫か?莉子・・・・お前、震えてるじゃねえか」




蓮がぎゅっとあたしの肩を抱き寄せて抱きしめる



あたしは蓮の広い暖かい胸に頬を寄せると再び問いかけた




あたしは・・・お母さんの今を知りたい、知らなくちゃ前に進めない



純粋にそう思ったから蓮に問いかけた



「お母さんのこと・・・・全部話して・・・・」




あたしがそう呟くと蓮の抱きしめる腕がより一層強くなった