「あっ・・・・帰って来た!」



「あ・・・本当だ、今日はちょっと遅かったですねえでももうすぐ卒業式シーズンだしお休みになっちゃうから明日からは下校時間がもっと早くなると思うし明日はちょっと早く来ましょうね」



「そうね・・・・莉子が早く帰って来るんだったら給食はあるのかしら?お昼作っておかないと・・・」




そう言いながらあたしの横をすり抜けると病室にひとり帰って行くお母さん



怪訝に思いながら病室の窓を見ると道路をはしゃぎながら歩いている沢山の小学生



下校途中の黄色い帽子をかぶった小学生は友達同士で三人四人と楽しそうに列を作って歩いているのが目に入ってきた



看護師さんはそんなあたしに目をとめると語りかけるように話し出す



あたしは小学生の頃を思い出しながら耳を傾けていた



「ちょうど小学生の下校する時間になると決まってここに来て窓際で眺めるのが高遠さんの日課で・・・・」




「えっ・・・そうなんですか?」



「違ってたらごめんなさい・・・もしかして高遠さんの娘さんですよね?」




「ええ・・・そうです、娘の莉子です!母は・・・母の容体はどうなんですか?」




あたしの問いかけに看護師さんは溜息をつくとゆっくりと話し出す


お母さんの記憶はあたしが小学生くらいの頃の記憶でぷっつり途絶えているようで・・・



それ以降のことはまったく記憶にないらしい



あたしはどうすればいいのかわからずに窓辺の景色を見ているしかなかった