「じゃあ、あたしは別荘のほうに戻りますから何かあったら・・・・坊ちゃん、いつでも連絡くださいな」



「わかったよ、春さん・・・美帆!じゃあな、あんまり遊んでばっかだと後が大変だから手伝いも程々にな」




慎ちゃんがそう言うと美帆ちゃんは黙って頷いてポケットからメモを取り出すと何かを書いて慎ちゃんにそっと渡した




慎ちゃんは書いてあるメモを見ると柔らかい笑みを浮かべてる



春さんと手を繋ぐと手を振って足早に帰っていく美帆ちゃん




あたし達に向かってぺこりとお辞儀して帰っていく



美帆ちゃんがおばあちゃんをいたわるように歩調を合わせて歩いているのがわかる



なんだか微笑ましくて二人の後姿をじっと見つめていると蓮が思いもかけないことを言い出した




「龍音寺さん、違ってるかもしれねえけどあの美帆ちゃんって女の子もしかして声が・・」




「・・・・さすがだね、東條君の思ってる通り美帆は喋れない・・・ちょっとショックなことが重なって声を失ったんだ、精神的なダメージによるものだって医者は言うけど・・・・
未だに声が全く出ないんだ」



声が出ない・・・・そんな・・・



そんな風になるほどショックなことが重なったってことなんだ



声を失うほどの出来事・・・・・




あたしの辛さなんて美帆ちゃんが受けた辛さに比べたらなんでもないことなのかも・・・・