「水沢光」
その“また”はすぐに訪れた。
煩い休み時間の教室。
雑音の中で何故か私の耳に心地良い音が響いた。
聞いたことのある声。
そして、あの時と何も変わってない、どこか焦燥感を感じるもどかしい音だ。
「水沢ー。なんか、客だぞ。」
知ってる。聞こえてる。
クラスの男子が中継する前に、私はドアの前に立つ青年の存在に気づいていた。
私を呼ぶ彼の声はまっすぐに私に届いたのだ。
「深山…色」
やっぱり、すぐに会うって思ってた。
…というより、会いに来るって。
何故かなんてはっきり分からないけど。
「水沢光…。ちょっといいか。」
追いつかれないように?追い越せるように?
彼の声は何故か急いでいる。
息を切らしてるわけでも怒鳴るわけでもない一見落ち着いた声なのに彼の声を聞くとそう感じる。
朝のことを少しも触れない彼は、どうやら私に折り入って話があるようだ。
会いに来るって確信はあったけど、彼が何を考えているのか、行動の脈絡がなさすぎて訳がわからない。
ちなみに今は彼と出会った日と同じ日付。
その日の昼休みだった。
今、会いに来るのなら、あの時に用事を済ませば良かったのに、そう思わずにはいられなかった。
