舞う風のように


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「昨日話し合って決めた事を伝える。」





土方はそう言って由紀を睨み付ける。



土方の隣には近藤が座り、由紀の後ろでは山崎が目を光らせていた。




「昨日山崎とも話し合って決めた…佐上。お前を監察型に任命する。」







これには由紀も目を見張った。

「…新選組では、入ったばかりの信用も出来ないような人間を…監察型に任命するのですか?」



監察型などという、重要な役割を。




「勘違いすんじゃねぇよ。俺はただ佐上、てめぇを隊士の目に晒したくねぇだけだ。」



狭い部屋では、土方の良く通る声が響きわたる。



「…考えても見ろ。池田屋に居た人間が新選組で隊士をするんだぞ?少なからず不満や不安が発生する。」




今まで、黙っていた近藤が口を開く。





「それに、私達は小野寺さんを信用しているからね。」


凄く、優しい目をしていた。



「小野寺さんは信用に足る人物だ。
その小野寺さんが、君を長州の者では無いと言った。信用してくれと言ったんだ。」




「だから、私は君を信じる。」










「なんだ、てめぇ。監察形じゃ不満なのかよ。贅沢な奴だな。」




不満なわけない。
潜入するには充分過ぎる役職だ。





俺は、ただ…


もしかしたら、小野寺が間者かもしれないのに。
それだけで信じられるほど、これは簡単な問題じゃない。




「不満はない、満足してますよ。…ただ、あんた達が分かんないだけ。」




「あ"ぁ?」



「信じる、という言葉を簡単に言えるあんた達が。裏切られてる可能性なんて幾らでもあるのに。


…所詮信じられるのは自分だけだよ。」



そう言った由紀の目は、冷たく鋭かった。