一触即発。
ピリピリとした空気が辺りを包む。
土方が刀の柄に手を掛けたのが分かった。
相手は縛られているというのに。
平助以外、誰も土方を止めようとはしなかった。
…‥阿呆らしい。刀が無くたって俺は戦える。
そう心の中で強がると、後ろで縛られている腕をゆっくりと動かした。
だんだんと縄が緩んでいくのがわかる。
これには、コツがあるのだ。
小さな音を立てて、縄が完全に抜け落ちた。
さっと立ち上がり、構えの姿勢に入った時だった。
「局長に、副長。御来客の方が…‥。」
突然襖が開き、一人の隊士が顔を見せた。
「あ"ぁん?…んなもん後にしろ。俺は今は忙しいんだよ。」
そう言った土方は殺意の篭った目で俺を睨みつけた。
隊士は焦った顔をしている。
「で、ですがーーーー」
その隊士が、そう言いかけた時だった。
「すまん。そんな忙しい時に邪魔して悪かった。」
そう言って隊士に、続き部屋に入ってきたのはーーー
「お、小野寺!?」
そう、あの小野寺 雄策だった。