舞う風のように



「誰が信じるかそんな事。てめぇの名はなんだ。」



土方は刀を構えると、由紀に問いかける。



答えなければ刀で斬る、という脅しなのだろうがそんな事で話すほど俺は弱くない。
無言を貫き通す。



小さく舌打ちをした土方。


瞬間、由紀の二の腕から血が噴き出した。




嗚呼、この男は、俺が会津の者だと知ったら何と言うのだろうね。

そう、思うと少し笑みが零れる。




だが、俺はまだ言うつもりはない。


このままここに潜入して監察せよとの命が下っても、俺はきっと明かさない。

平隊士として潜入した方が相手は、変に構えたりせずありのままで居てくれる。





刀で斬っても痛そうな顔一つせず、突然笑みを零した青年に土方は眉を潜めた。



「さっさと名を言えと言ってんだろーが!!」



刀で再度、死なない程度に斬りつける。



だが、青年は能面のように顔色一つかえない。





何度も噴き出る自分の血を、由紀は他人事のように見つめていた。