「…何故こうなるのです。」



点々と血の跡の見られる蔵。即ち"拷問部屋"へと連れ込まれた由紀は目の前の美丈夫へ問いかける。




「…てめぇが一番怪しいからに決まってんだろ。
てめえは池田屋にいた。しかも総司を倒した。実力から考えて重要な人物に決まってる。」



しかも、その舐めた態度。気にくわねえんだよ。


そう土方は顰めっ面で付け加えた。



「理不尽です。…人間は皆、平等であるべきだと俺は思いますが。」




縄で手足を縛られ、身動きの出来ない葵は、目の前で刀を持って仁王立ちする土方を眺める。


痛いのは御免かな。



死ぬのは怖くはない。
大事な物、守るべきものなど何もない。

今死んで、やり残すことといえば復讐だけだろう。


だが、父と兄が自分の命を使って繋いでくれた命。
こんな所で無くすのでは、あの世で家族に顔向けできない。




土方を睨み、再度同じ分を繰り返す。


「俺は、長州の者ではない。」