遠くから響く金属のぶつかる音。…即ち、刀の音が聞こえてきた。




「…兄さん。」


横に居る兄に声を掛けた。



「敵の気配は複数あります。相当な手練れの様ですし…いくら父でも、数人を相手にするのは厳しいかと。」




父はここの道場主だ。

母のいない私達兄妹は、ここの門下生と共に小さい頃から武術に励み既に免許皆伝であった。
他の弟子達に剣を指導するのも少なくはない。



「…いくら父の言いつけといえど、死なれてしまっては意味がない。俺は助太刀に行こう。…由紀、お前はどうする?」



未だに聞こえる金属音。
そろそろ危ないかもしれない。



「私も行きます。」