舞う風のように



襖を開けると、中ではきりりとした美青年が待ち受けていた。



「久しぶりだな。…八尋。」




小野寺 雄作。別名、橘 健吾。

ともに容保公の下で働く者だ。





「えぇ、久しぶりです。健吾。」




「おう。」



いつも通りの無愛想な返事。








この世に俺の本名を知る者は一人もいない。

後から分かったのだが、父や兄が殺される前。すでに門下生達は全滅。殺されてしまっていたのだ。


それから俺は偽名を使うことにした。
あの男に強くなれるまでバレないため。

たくさんの道場へも通った。



佐原 八尋。とある男が名付けてくれた。
俺は今、その名で通っている。
勿論容保様にもだ。






小野寺と話したのはいつ以来だろうか。



もう1年は経っただろうか。












俺の中の時は
あの時から止まったまま。



誓いは忘れる事なく、俺の中に居座っている。