舞う風のように




「ここが、朝晩食事をする場所だ。出来るだけ早く間取りは覚えておけ。」




そういって宮間は一つの部屋を指した。



確かに。そこだけ沢山の人間の気配がする。




…騒がしい。
賑やかなのは嫌いじゃないが、煩いのは嫌いだ。というよりも、苦手だ。



知らないうちに険しい顔をしていたらしい。
宮間が怪訝そうに俺を見つめていた。




「賑やかですね。」

そう言って、慌てて笑みを作った。




「あぁ、そうだな。俺も最初は驚いたよ。だが、時期に慣れる。」




…危なかった。






そして、そこの扉に手をかけた。



「今から紹介するぞ。自己紹介の内容は考えたか。」



「まぁ、それなりに。」

無難な感じには。




「じゃあ行くぞ。
…戸惑う事も多いだろうが、何かあったら橘くんか俺を頼れ。いいな。」




どうしてこの人は、ここまで俺に親切にしてくれるのだろうか。


怪しいものは監視せよとの藩からの命だろうか。


…それとも、唯の親切心だろうか。




分からない。
…だが、信じてはならない。




「ありがとうございます。感謝します。」