日曜日の昼間、わたしはいつものように釣り道具一式を持って行って、港で釣りを楽しんでいた。
ハゼを三匹ほど釣りあげて、しばらくしたところで、前述の少年に声をかけられたのだ。


「ぼくと、デートしてくれませんか?」
「ふえ?」
まぬけな声をあげながら、少年を見上げた。


少年は、やさしい笑みをうかべながら、堤防にあぐらをかいて座るわたしを見下ろしていた。


「え?え?え?え?」
わたしは顔を赤くした。
ナンパされるなんて、生まれて初めての体験だった。どうすればいいのか、わからない。釣り竿をにぎったままの姿勢で、ただただ困惑する。


しかも、この少年、結構かっこいい。


「上野渚さん、ですよね」
と少年は言った。
「えええええっ!?」
混乱した。


え?なんでわたしの名前を知ってるの?初対面なはずなのに。・・・・・・いや、もしかしたら、実は知り合いで、わたしが彼のことを忘れてしまっているのかもしれない。


「あの・・・・・・、なんでわたしのことを?」
恐る恐る聞いた。