「園田くんは……昨日、亡くなってしまったの………」


え…今なんて言ったの? な、亡くなった?…


「えっ、ええ…そんなわけないよ…」


「信じられないかもしれないけど、本当なの。」


んなわけないよ…

「夏木さん、205号室が、園田くんの部屋なの。
今度一緒に……『今行きます!』


看護婦さんの言葉を遮るようにしてそう言い、ベットから飛び降り駆け出した。


「夏木さん!!」


看護婦さんの言葉を背に、205号室に向かって走った。


「ハル!!!…ハア、ハア」


ハルの顔がどうしても見たかった。


「ハ……ル…?」


でもそこには、私が見たかったハルではなく青い顔をして動かないハルだった。


近くに駆け寄り手を握る。冷たかった。


その氷のような手が、何もかもを語ってくれるようだった。


「うそでしょ…ハル。ねぇ、起きてよ!!答えてよ!! ねぇ、笑ってよ…」


瞳から溢れた涙が繋いだ手を濡らす。


ハルはいつだって優しかった。そしてそのほんわかとした笑顔でいつも私を包んでくれた。


私が生まれてはじめて好きになった人で、はじめて付き合った人。


思い出の一つ一つが涙となって消えていくようだった。


もうあの優しいハルには会えない。泣くことしかできない自分が悔しかった…


私はこれから誰かを愛してはいけないのだろうか―――