「キャッ……って誰ですか!?」


ぶつかったのはスラッとした青年だった。


中学生か高校生ぐらいだろうか。


「んん?…俺は岡本拓真。高1。」


「はい、どうも……ってそこじゃないですよ!!というか、あなたなんでこんなところにいるんですか!」


「あのさ…君が俺に気づかないで隣に勝手に来たんでしょ。」


拓真という彼はため息混じりにそう呟いた。


「えっええっ!!嘘でしょ!!」


「残念ながら本当なんです…あ、あなたの名前聞いてなかったね。何て言うの?」


「夏木美柑。中2です。」


「はあっ!?何?夏みかん?」


「ち…違います!!な.つ.き.み.か.んです!」


「はいはい、いよかんでいい?」


「だから、夏木…もういいです。夏みかんだって、いよかんだって…」


「あなたここの人じゃないよね?」


「はい。東京から夏休みになったから、こっちにいるおばあちゃんの家に遊びにきたんです。」


「ふーん…」


まだ本当は夏休みではないのだけれど…と思いながらも本当のことは言えるわけもなかった。


でもこんなに人と話したのはすごく久しぶりだった。


話した相手は今会ったばかりの人なのに…不思議だった――