「おい」
小さく、けれど私には十分聞こえるその声。
気付いたら、声をかけてきたその人の胸倉を掴み、押し倒して馬乗りになっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、っ!!」
拳を握って振り降ろす。
けれど、すんでのところで思い留まり、ぴたりと目の前で止める。
「なんでっ…なんで止めないのっ」
私の下敷きになっている人を睨むように見下ろせば、涼しい顔をしていて。
こっちが焦る。