かろうじて目線を逸らさなかったのは、褒めてほしいくらいだ。
心臓の音が鮮明に聞こえる。
「逃げるんですか?」
それだけは決して冗談ではない声色。
「私は、もう、」
「変わりませんよ。あなたがそのままでは」
あまりにももっともなことを言う。
だから私は先生の胸倉を掴んだ。
それでも先生は私から視線を逸らすことなく、真っ直ぐに見つめてくる。
途端に自分の愚かさに気付いて手を放す。
すると、小さく息を吸う先生。
「ごめんなさ、」
「いいですよ。俺が意地悪したのが悪いですし」