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お爺さんのお通夜が終わった。
あんなに優しかったお爺さんが、もういない。
もう、いない。
そう頭では理解しているのに、実感が沸かなくて、ふわふわして……。
「撫子ちゃん」
正座した膝の上で、拳を握り締め、ぼんやりしている私の視界に誰かの足が映りこんだ。
私の名前を呼んだこの声からすると、塩谷さんだろう。
私はゆっくりと顔を上げると、塩谷さんは相変わらずへらりへらりと笑いながら、私を見てきた。
「(……なんで、こんな時に笑えるのかな?)」
塩谷さんが分からない。
こんな時に、なんで笑えるんだろう。
いや、けど……こんな時に無表情な私も、どうかと思うけど。
悶々とそんな事を考えていると、塩谷さんが私の隣に腰を下ろした。
なにか話があるのかな?なんてそちらに視線を向けようとしたら、ぐいっと後頭部を掴まれ、引き寄せられた。
「わっ…」
引き寄せられたせいで、ぽふん、と私の額が塩谷さんの胸板にぶつかった。
引き締まった胸板のせいで、少しだけ痛かった。
……いや、と言うか、これは…?
「あの……やめて下さい」
「あらあら、クールだねぇ、撫子ちゃんは」
「…………怒りますよ」
「まぁまぁ。涙が引っ込むまではこうしてなさい。本当ならおじさんのここ、高いんだから」
「……なみ、だ?」
何を言ってるんだろう。
こんな、無表情な私が、泣いてるだなんて……。
「あ……」
頬に手を当てると、思わず声が出てしまうほど、涙が流れていた。
驚いた。自分でも無意識のうちに泣いているなんて。
…と言うか、まだ会って間もない人に、泣いている所を見られるなんて、最悪だ。
そうは思うものの、お爺さんが居なくなってしまったという悲しさの方が強くて、私はポロポロと涙を流し泣き続けた。
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どのくらい泣いたのか分からないほど、時間が流れた頃。
泣きすぎて赤い目を、鏡で眺めていたら、話があるから、と塩谷さんに呼ばれ、お手洗いからお爺さんの部屋へと移動した。
「ありがとうね、親父の為に泣いてくれて」
「……いえ」
「で、話っていうのがね……」
言葉を紡ぎながら、ポケットから何かを取り出した。
長方形の白い封筒には、遺言書、と書かれている。
あぁ、自分で死期が分かっていたのか、と思うと、また泣きそうになってしまって、私はぐっと拳を握り締めた。
