「悠斗君!!お疲れー!!」


いつものバス停。


今日もいる、隣の桜高の女の子。


「お疲れ」


俺はそう返すと空いているベンチに座る。


「今日は山下くんはいなあの?」


辺りを見渡しながら彼女は聞く。


「友貴は今日は部活休みで先帰ったよ。残念だね」


中学時代からの親友の友貴は、綺麗な顔立ちでいつだって人気があった。


綺麗なくせに、気取らない。


そんな友貴は俺の秘かな憧れだったりする。


ふと。


隣の千夏ちゃんが黙り込んでいるのに気づく。


気になって彼女の方を見ると、彼女はうつ向いていた。


「千夏ちゃん?」


ゆっくり彼女に呼びかけると、彼女は顔を上げて俺を真っ直ぐに見つめてくる。


「悠斗くん、それわざと?それとも本当に気づいてないの?」


心なしか、少し潤んだ瞳。


この目は以前にも見たことがあった。


卒業式の前日に、あの子が見せた表情。


あぁ、そうか。


やっと千夏ちゃんが言いたいことを理解する。


「あたしは、悠斗くんが好きなんだよ」