ダメだって分かってた。


あのとき……


亜衣香と麻那美が吉村くんに探りを入れたときから。


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「じゃぁ今さ、由香里にコクられたらどーする?」


あたしは一人、ベランダで聞き耳を立てていた。


十二月の外はよく冷える。


あたしはポケットのホッカイロを取り出して両手で握り締めた。


寒さと緊張で微かに手が震える。


そんなあたしの耳に聞こえたのは、明るい吉村くんの声。


「ありえねぇって……」


「もしも、だってば!!」


亜衣香が少し強めに言う。


少しの間が空いて、また吉村くんの声。


「そんなの……付き合うわけねぇじゃん」