「はよ、悠斗」


次の日の朝、昨日のことは何もなかったかのような友貴が挨拶をしてくる。


「…はよ」


一方の俺は気まずさに絶えきれなくて、つい視線を反らして返す。


「俺さ」


友貴はそんなことお構いなしに続けて口を開く。


「由香里とは別れたから」


一瞬、何を言われたか分からなかった。


「……え?」


俺は間を置いてから思わず聞き返した。


「やっぱり俺、一人のが楽だし。ちょっと今忙しいしさ」


友貴のほうは何も気に留めていない様子。


「別に悠斗のせいとかじゃねぇから」


いつも通りの笑顔で。


「だから今度は逃げずにしっかり頑張れよ?」


俺の肩を、ぽんと叩いて先に教室に向かう。


俺はしばらく呆然と廊下に立ち尽くした。