『ただいまあー!!』
トントントントン
お母さんの包丁の音がする。
『おかえり。どうしたの?学校で何かいい事あったの?』
『うん!もう友達ができた!』
お母さんはにっこり笑って、どこかホッとしたような顔で
『よかったね。』
そう言ってまた包丁を動かし始めた。


中学生の時、私が苗字でいじめられてると知ったお母さんは毎日夜に泣いていた。
お父さんは私が9歳の時事故で亡くなった。でも、お母さんは苗字を戻さなかった。お母さんは人思いな人だから
『苗字戻しちゃったら、お父さん、最初からいなかったみたいで嫌なの。』
それで苗字を戻さなかった。

でもそれが原因で私がいじめられた。
どれだけ辛かったんだろう。
私はいじめられて辛かった。お母さんは自分が原因なんだって、自分を責めてた。
私の何倍苦しんだんだろ......。
考えただけで胸が痛くなる。

高校で、友達ができてよかった。
やっとお母さんを安心させることができた。心から、そう思った。