さやかは、かずとに先に行くように
伝えて亜美と2人きりになった。
客席からは誰も声を出さず、私たちに
釘付け。
『ごめん。
亜美ちゃんってかずとのこと……
好き…なんだよね…?』
『え…?//』
『言わなくても分かるよ。
亜美ちゃんがかずとのこと見てる時って
好きな人を見る目だもん…。
…苦しいよね、辛いよね。
気づかなくて本当にごめんね……。』
『そんなっ…!
二人共あんなに楽しそうで
幸せそうなのに私がその中に
入ろうなんておかしいに決まってるもん。』
『…亜美ちゃんを見てると昔の自分を
見てるみたい……。
私もね?かずとと付き合う前、片思いで辛くて、嫉妬して、もういいやとか
思ってたの。
でもそれじゃダメって気づいた。
今なら分かる。
今、何もやらなくてどうするの?
亜美ちゃんの恋はそんなことで終わるの?
もっとぶつかりなよ!』
『それって…私がかずと君に告白
してもいいって言ってるように聞こえるよ…?』
『…いいんだよ。彼女がいたら
告白したらダメなんて決まってないもん。
その時…かずとが誰を選んでも
いいんだし……。』
最後の方になってくるとさやかは
声が震えて小さくなっていた。
亜美は、ありがとうと一言告げて
かずとの元へ走って行った。
『そうだよ…私は彼女なんだよ?
かずとは絶対ふってくれるに決まってるもん…。
私はかずとを信じて亜美ちゃんに行かせたんだから………。
今まではそんな光景いっぱい見てきたけど今回は…今回だけは…嫌な予感が…』
ポロっと一粒の涙を流した。
その時、私は亜美ちゃんに
かずとをとられる気がしたのです。
まわりはザワつき
「かりん、本当に涙流してる!」
「え、すごい!!」
などの声が絶えない。
あったり前でしょー?
涙ひとつ流せなくて猫被りは務まらないからね
演技力は誰よりもすぐれてるもーん
ゆっくり舞台が暗くなり
せかせかと背景を変えたり私も
急いで服を着替えて髪の毛を直す。

