「七瀬君遅れてごめんねっ!!」
「ううん。大丈夫だよ」
目の前にはニッコリしている相川。
放課後に相川と体育館で二人きりで練習。
「じゃあ、クライマックスのところからやる?」
「ヒロインと揉めて、結ばれるとこだったよね?
うん!そこからやろっ♪」
台本を見ながらどこのシーンをやるか決める。
初めは、読み合わせから。
こいつ、いつも以上にニッコニコしてるなー…
まぁ私もだけど。
『私を疑うの…?信じてくれないんだ?』
『俺だって疑いたいわけじゃない。
でも、彼女があんなことしてたら……疑いたくなくても疑うだろ…』
『そんなの…かずとだって同じじゃん…知らない女の人と何やってたの?
私…見てたよ……?』
「よし、読み合わせはここまでにしよっか。今度は本格的に。」
「うん」
あー…すんごい疲れる……
いつも演じてるのに、その上からまた演じてるし……頭おかしくなりそうだわー
『昨日、何処で何してたんだよ』
ビクッ
すごい…
もう役になりきってる。
それにすごい迫力で相手のペースに飲み込まれそう…
さすがNo.1相川七瀬
私も負けてられない!
『私を疑うの…?信じてくれないんだ?』
涙目で弱々しく言うさやか役の私。
『聞いてるのはそんなことじゃないんだよ!』
そんな私に怒鳴るかずと役の相川。
アドリブさっそくきたか……
なら、こっちも…
ギュっと相川に抱きつく。
『だって…私見ちゃったんだもん……
かずとが知らない女の人と歩いて楽しそうにしてるとこ……』
どー?
あんたのアドリブにアドリブ返し。
しかも台本通りにちゃんと戻したの分かってる?
すると相川は私の顔を上げさせ
「すごいねぇ…その演技力。
やっぱ、いつも役になりきってるから…?」
いつもとは少し違う笑顔。

