「俺のせいなんだ」

「え、それってどういうこと?」

「俺が彼女の眼鏡を壊したんだ」

「壊したって……」








 男の人――――千住くんは淡々と奈美に昨日のことを話していた。そして「あー」と納得したような声が奈美からもれた。

 あれは、仕方なかったことだ。


 どうするのよ、と奈美がいうそれに、私は「それで今日さ」と眼鏡店に行くことを話した。
 奈美と講義がいくつか被っているものがある。それらのノートをあとで見せて欲しいと頼んだのだ。出席は仕方ない。けれど内容を把握しておかなければ後で困る。

 彼女は「いいけど……」といったが、やがて思い付いたように千住くんの腕を叩く。







「千住くんにノート頼んだら?」






 ええ!?
 どうしてそうなる。







「俺は彼女と一緒に店行こうと思ってたんだけど。見えないと行くの大変だろうし、それに――――弁償したいし」

「えっと、弁償は……」

「いや、俺のせいだから、気にしないで」







 無理があるよそれ……。

 弁償って、彼がわかっているんだろうか。二万は飛ぶよ絶対、と思いつつ、そんな私を無視して奈美と彼は頷く。

 どうやらこの二人は知り合いらしい。
 私だけ置いていかれるみたいだった。







「―――――ならノートは私に任せて。二人で行ってきなよ」

「ちょ、ちょっと奈美!?」







 人が増えてきたらしく、色んな声がする。
 お知らせなどが貼られる掲示板前は人が増えてきて、少々混雑しはじめていた。

 避けるように壁に寄ったが、その前に大きな千住くんが立ち、なんだか壁みたいになっている。

 いや?といわれて、困る。
 別に嫌じゃない。
 だが、そういう問題じゃない。







「千住くんは弁償したいって言ってるし、私だって足元に不安がある明日香を一人でっていうのも不安なのよ。ここは一つ、千住くんにボディーガードしてもらったらいいじゃない」







 今わかった。
 目の前にいる友人は、私のこの状況を少々面白がっている(?)ように見えた。見えるというよりもこれだと雰囲気、といった方が正しいかもしれない。 


 こっちは生活がかかってるのよ


 千住くんはというと奈美の意見に賛成らしく、あとの問題は私だけであるようだ。
 私は諦めるしかないか、と思った。