「なんで私がゆの“ちゃん”だってわかったんですか?」

「だって名札に書いてあるじゃん。」

「でも苗字かもしれないじゃないですか。」

「あー、もう1人の女の子はAYUって書いてあったから。」

あー、チャラ男ね。
そういうことね。

「はー、そうですか。では、お手洗いに行くので失礼します。」

「ダメ。まだ俺の質問に答えてくれてないよ。俺はゆのちゃんの質問に答えてあげたんだから。」

「私です。じゃあこれで。」

「ダメ。「はー、なんなんですか?私仕事中なんで早く戻らないといけないんですけど。」」

「アドレス教えてよ。」

「は?モテモテの鈴木さんが私なんかのアドレス聞いても意味ないでしょう。」

「アドレス教えてくれないなら家まで送って行かせてよ。タクシーで。今日何時まで?」

「…別に送ってくれなくていいです。」

「じゃあアドレス教えて。」

うーん…
腕離してくれないし、このままじゃトイレ入れないし、仕事戻れないし、このままここにいたらいずれ誰かに見られるし…

アドレス教えるよりはタクシーで送られる方がまだマシか。
運転手さんいるしアドレス教えなくていいし。
私に飽きさせる?こともできるだろうし。
周りに女優かファンかしかいなくて一般ピーポーがいないから珍しいだけだろうし。

「わかりました。じゃあタクシーで送ってください。」

「わかった。何時まで?」

「10時半です。」

「じゃあ10時半に向こうに迎えに行くから。逃げないでね。逃げてもまたお店来るし意味ないからね。」

あ、そっか。こう言って逃げるって手もあったのか。

でもストーカーみたいなのは勘弁してほしいなー。