「まあな」

 しばらく腕組みをして考えていた航太が、

「わかった。連絡してみる」


 やっと、承知してくれた。

 よかった。
 あいつに話したいことがあったから、繋ぎが取れて安心した。


「俺、そろそろ行くわ。次の試合の準備をしなきゃな」

「そうだね。頑張ってね。航太兄ちゃん」

 優勝してねって言いたかったけど言わなかった。
 あんまりプレッシャーかけてもね。

 航太が僕の前からいなくなった。


 ふう。

 今日はこのまま帰るつもりだったんだけどな。

 帰れなくなったじゃん。

 しょうがない、約束したもんね。
 航太の試合、見届けなきゃ。
 たまには見てあげないと。


 そうだ。

 陽菜ともう一度会えないかな? 


 一緒に観戦できたらいいな。


 メールしてみよう。



 打ち終わって、僕はゆっくりと2階の観客席へと向かって歩いていった。