当然。

 悠斗がはいってきた途端、隣のコートからざわめきが起きた。
 あからさまではなかったけど、あれで女子達が浮足立ったのはホントだから。

 おまけに陽菜に愛想を振りまいて、陽菜もそれに応えたりするからだけど。
 陽菜のそういう時の空気は読めないからな。


「ペナルティ? 自粛? って、どうして?」

 ほら、やっぱりわかってない。

 鈍感、陽菜。


「監督の平手打ち、忘れたのか?」

 歩道を歩いていた陽菜の足が止まった。

 イヤなことを思い出したって、陽菜はぷくっと頬を膨らませた。

 俺は背中越しに振り返って陽菜を見る。
 プンと怒った顏が幼くて初めて会った頃の陽菜を思わせた。



 あの頃って、喜怒哀楽がはっきりしてたような気がする。

 思い通りのプレイが出来ないと、ものすごく自分に怒っていたっけ。