まさか……

「怪我したの? 病院は?」

 冷やすと聞いて連想したのはそれだった。

「大丈夫なの?」

 僕は慌てて跪いて、陽菜の全身を確認する。
 どこ? 足? 手? それとも腰とか?

「怪我じゃないから、そこは心配しなくていいから」

 不安に駆られながら陽菜を見ていた僕の頭上に、航太の声が降ってきた。

「え?」

 じゃあ、何なの?

 訳が分からない顔で航太を見上げて、それから陽菜を見ると、気まずそうに視線を外した。

「冷やしたいのは顏。まだ少し赤いだろ?」

 航太が身をかがめて、左頬を触る。

「もうちょっとかな? 今夜しっかり冷やしとけば、明日は大丈夫だろ」

 陽菜は力なく仕方なさそうに頷いた。

 何かあったとは察しはつくけれど……


 誰が? 何のために? 何が原因で? 

 肝心なことが分からない。



 ……それよりも冷やさないと。