「1つだけ言っておくけど、陽菜に触るのは禁止。たとえ髪の毛一本でもね。それから何か問題を起こしたら、即中止にするから。陽菜には近づけさせない。それだけは守ってもらう」

「ちょっと、厳しいんじゃないのか? 不可抗力ってのもあるかもしれないし」

 故意に触るつもりはないけど。

 つい、うっかりってこともあるし、あの時はそんな感じだったし。

 これから先だって、ないとも限らないし。


「自分のことより陽菜のことを考えろ。今、大事な時なんだから。俺は何ごともなく大会を迎えさせてやりたいんだよ」

「そんなに陽菜のことが心配か?」


「中1の時、失敗してるんだよ。2度とあんなことは経験させたくない」


「失敗って?」


「……それは、言いたくない。苦い思い出だからな。陽菜にはいつも光の中にいてほしいんだよ。あいつは輝かしい光を浴びているほうが似合うから。悠斗、おまえもちゃんと心しておけよ」



 決死の覚悟をしているような真剣みを帯びた表情で言い放つと、航太は教室の中に入っていった。