「せっかく・・・。好きになれてきたのに・・・・」





ぼそっとあたしが呟く。




祐兎はため息をついた。


顔をあげられない。




あたしは、
色んな祐兎を、一度に知りすぎたんだ。




だから、こんなにも胸が痛むんだ。




順を追って知っていけばよかったのに。




武田くんも、磯部くんも知らないことを、
あたしは背伸びをして知りすぎたんだ。






知らなくてよかったのに・・・。



病気のことなんて、知らないまま、
今までどおりにからかいあって、



あたしの中で、
“ムカつくあいつ”のままでいて欲しかった。



なのに、
 なのに・・・。






「亜貴と一緒に帰れ。もういいからさ」



「あたしは帰るから、
 せめて亜貴には一緒にいてもらおう?」



「いいから。お前一人だとあぶねぇし」



「大丈夫だよ」




「大丈夫じゃねぇだろ!?
 さっきみたいに狙われたらどうすんだよ!?
 少しは自分が女だって自覚しろよ!!」







ダメだ。


お互いに、感情的になって、
ぶつかってしまう。



あたし、
これじゃあ祐兎に何も言ってあげられない。



必死に隠そうとする祐兎を
傷つけるだけだ・・・。








「・・・ごめん。もう帰るね」


「・・・・おう」




あたしはうつむいたまま、病室を出た。