ようやくそこで初めて理解した。


この人がこいつだってことに。


「何だよ。アホくせぇ顔。
 それより、立てんのか?」


「え・・・な・・・はぁ?」



ちょっと待って!



何が何だかわかんない。
なんでこいつがここに?


ていうか、何なのその残念な紳士っぷりは。


あたしはとりあえず立ち上がろうとした。


だけど・・・。



「きゃっ・・・!!」


「うぉ!?何だよ腰抜かしたか?」


足に力が入らずに、よろけてしまう。


祐兎が片手であたしを支える。



何こいつ。
こんなことできんの?


てか、いつもの馬鹿祐兎じゃない感じが
なんか落ち着かない!!




「ホラ。下がってろよ」


「え?あんたは・・・?」


「あ?俺にはまだ宿題が残ってんだよ」




しゅ、宿題って・・・。


子供じゃないんだから・・・。



祐兎はさりげなくあたしを後ろに追いやると、
庇うようにあたしの前に立った。




「おい、持田。てめぇ、ヒーロー気取りかよ」



男のうちの一人、
あの時の先輩の弟が戸惑いながらそう吠えた。



祐兎は余裕で、涼しそうな顔をして笑った。






その笑いは、笑顔とか、
微笑んでるとかじゃなくて、



その目は冷たくて、


絶望感に溢れていて、


どこか怖いような笑みだった。






「祐兎・・・?」


「麗華、すぐ終わっから待ってろよ」



「え・・・?」




祐兎はそうあたしにいうと、
目の前の男達をにらみつけた。










「祐兎っ!!」