部屋に戻ると、もうすでに祐兎が戻ってきていた。


こいつ、本当に煙草吸ってたんだ。


ライターがテーブルに置かれていた。



あたしと亜貴が一緒に戻ると、
磯部くんがからかうようにニタっと笑って口を開いた。


「あれ?亜貴、REIと二人でなにしてたんスか?」


「おい、亜貴。俺らのお嬢に何手出してんだよ~?」


武田くんもそれにあわせてからかう。


何もないし!


てかお嬢って何!?



「ばっか。麗華がウロウロして迷ってたから
 連れてきてやったんだよ」



さりげなく話を合わせる亜貴。


あたしもそれに合わせて慌てて首を縦に振った。


「ふーん。まぁ、何でもいいわ。
 ほら、じゃあ亜貴歌えよ」


「は?」



祐兎が突然そんな無茶振りをふる。


亜貴はびっくりしたような、
それでいて気だるそうな声を発した。


「いーだろ。お前らがいないあいだ、
 随分歌って疲れたんだよ」




絶対嘘だ。


てか、こいつ歌えないじゃん!!


そんなことくらいわかってるはずなのに、
亜貴は渋々マイクを持って曲を入れた。



バラード?


随分とゆっくりな前奏が入る。



「モッチー、今日だけだからな。
 お前の無茶振り受け入れんの」



亜貴は前奏中、
祐兎をじとっと呆れた顔で見つめた。



祐兎はニカっと笑うと、
敬礼みたいに手をかざした。




こいつ・・・。



面白がってる。




亜貴に無茶させないでよ!!





前奏が終わりに近付いて、
画面に歌詞が映しだされる。




あれ?
洋楽・・・?



まぁ、亜貴らしいっちゃ亜貴らしいよね。



亜貴は面倒くさそうに視点を外して歌い始めた。



亜貴、発音良いんだね。



すっごく様になってる。




なんだか、かっこいいなぁ・・・。



そう思って聞いていると、
祐兎が急にマイクを持ち始めた。



「え・・・?」